2011年4月30日土曜日

4月30日 開講初日は種まきの日

心配されていた天気も味方をしてくれたのか、開講初日の朝は青空。緊張気味の表情で集まった11人の受講生たち。

最初の講義は「種」の話です。坂本一雄先生はいわゆる自然農のベテランで、147品目の野菜をすべて自家採取で育てられます。農薬はもちろん、あらゆる種類の堆肥も使わない、外部からの投入を極力抑えた手法で30年間土づくりをされています。

机の上に並べられた種は、大根、キャベツ、レタス、トマト・・・。小さな種をみんなで観察しました。

カボチャやピーマンは、よく見ればみんな私たちが普段料理のときに捨てている野菜の一部。なーんだ、っていう感じですが、きれいな袋に入ってホームセンターに並んでいる種とは別物のように見えるから不思議ですね。


もちろん、店頭に並んでいる種は特別な技術で育種、保存されているもので、品種、品質の管理は完璧です。これらは一般にF1品種と呼ばれ、親の優勢形質(食味がいいとか、寒さに強いとか)が必ず発現するように掛け合わせて作られた種です。プロ農家の場合、生育のばらつきは作業効率の低下、すなわち生産コストにはねかえるし、だいたい野菜の味や形がばらばらでは売り物になりませんから、品種を均一にするF1技術は不可欠なものです。でも、野菜くずの中の種だって、大切にとっておいて上手に育てればちゃんと食べられる野菜に育つのです。坂本先生の北の雫(トマト)だって、最初は食用のF1品種から10年以上かけて自分で育てて固定したものなのです。


確かに自家採種された種は発芽も揃わないし、形や味が変わるものもありますが、自給農家にとって均一性は重要ではありません。むしろ、生育のばらつきで全滅を防いだり、長く収穫できてメリットにすらなります。妙な形の野菜だって楽しめばいいじゃないですか。

「種は命。この命を活かして次の命を育てる責任を持って」と坂本先生は語ります。


商品だと思って買った種からはあまり感じられなかった「命」の重みを意識しながら、みんなでポットに種まきをしました。育苗室で育苗されたレタスやキャベツの苗を鉢あげする作業もしました。「苗が移動したことが気が付かないように・・・」そっと移してあげます。


最後の実習は裏の川の堤防で草集め。去年の枯草をレーキで集めては運び、集めては運び・・・これを積んでさらに分解させ、圃場の保温に使ったり、土に入れて微生物の活動を活発にしてやるのです。

ウチでは米も作るので稲わらもマルチや堆肥づくりに使いますが、都市では簡単に手に入る材料ではありません。河原の枯草ならどこでもいくらでもある資材。というか、ゴミとして廃棄しているものですよね。身の回りにあるこんなものも活用しながら、エネルギーもコストもかけずに栽培したいものです。

ヒバリの声を聞きながら作業をし、食べられる野草を見つけて興じているうちに、いつの間にかみんなの緊張も解けて表情に笑顔が見られるようになりました。
今年も1年一緒にがんばりましょうね!

2011年4月29日金曜日

体験塾、いよいよ明日開講!

我が家の苗も少しずつですが成長しています。
ビニルで覆うとか、衣装ケースに入れるとかしてもっと温度を上げようかと思いましたが、部屋の中で日照量も少ないし、徒長してしまう危険性を考え、あえて室温のまま窓際に置いています。

まだ外は肌寒いけれど、ホームセンターではもう花芽のついた立派なトマトの苗が売りに出ていました。何重にもしたビニルハウスの中で暖房して育苗したものです。プロの農家さんは、出荷時期が早いほど収益も上がるので、できるだけ早く定稙する必要がありますが、素人の家庭菜園にそんなプレッシャーはありません。
もちろん、早く食べたいとは思うけど、できるだけエネルギーを使わずに、加工貯蔵で長い期間食べられる技を身に着けるのが私たちの目標です。


もっとも、つい最近まで絶好調だったコモンハウスの苗は、切り返した温床の発酵熱が上がりすぎて死滅するという事件に見舞われました。(野良人のブログを参照してください)

寒さ対策のために作った温床でしたが、熱すぎのダメージのほうが実は怖いのです・・・。


自然の熱は自在にコントロールできません。ダイヤルひとつで操作する機械や装置と違って、熟練するまでに試行錯誤の時間が必要なのでしょう。グループで取り組むメリットも活かしながら、もっと上手に自然の力を活用できるようになりたいと思います。


今年もいろんなチャレンジをする予定です。明日はいよいよ体験塾の開講日。

例年よりも人数は少ないけれど、負けずに内容の濃い授業を目指します!

2011年4月19日火曜日

N'DANA&JIBUCON ライブ

こんな人里離れた古民家で、ちょっと嘘みたいですが、世界をまたにかけるN'DANAと東京からやってきたJIBUCONのジョイントライブが開かれました。


JIBUCONさんの音楽とは初めての出会いでしたが、東京の国際エコビレッジ会議でも演奏したことがあると聞き、思いがけないつながりも感じました。


アフリカンドラムにディジュリドゥ、ギター、鼻笛など素朴で美しい音色と、思わず踊りだしてしまうリズムに、コモンハウスはひととき別世界に。

自然を慈しみ、仲間と手をつなごうと呼びかける彼らの音楽は、今この場所で聞くのにぴったりだったと思います。

「もったいね~ょ」はエコビレッジのテーマソングかもね?



震災や原発事故や、その他政界、経済界の醜いどろどろ、悲しさや憤りに満ちた世界でそれでも生きていかなくてはいけない。そんな苦しいときに人びとを癒してくれる力が音楽や芸術にはあることを改めて感じました。


私も最近ストレスのせいか夢見の悪い日が続いていましたが、久しぶりに頭の中が真っ白になるような時間を過ごしてすっきり。

明日からまた頑張ろうっと!

2011年4月17日日曜日

コモンハウスに異空間登場?!

築60年くらいのコモンハウスは、さすがにあちこちに綻びが出ています。
床が傾いていたりふすまが動かなくなっていたりは珍しくなく、部分的に修繕・改築しながら使用しています。


今回リフォームしているのは2階の小部屋。

ゲストルームにする予定の部屋です。この部屋も3月まではかなり「いい味」を出していたのですが、思い切って大規模な改築を行うことにしました、


くたびれた畳をはがし、天井の板をはがすと、この部屋のありのままの姿が現れてきます。
今の家と比べると、断熱材が入っていなかったり粗末な部分もありますが、昔の家ならではのこだわりや工夫も多々見られます。


家自体の歪みをごまかしつつ、古いものの良さを活かしつつ、なおかつただの修繕に終わらない「異空間」づくりにビルダーさんたちも知恵と技を絞ってくれました。 窓だって、とても格好いい窓枠がついたダブルガラスに!これで冬もかなり暖かくなるでしょう。

施工はおおむね終了し、現在はHEPPの会員さんらが壁塗りの真っ最中。初めての壁塗りは最初は慣れずに苦労しましたが、みるみる上達してすばやくなりました。


屋根裏部屋が、サーモンピンクのおしゃれな部屋に変身しています。

サンタフェ風?うーん、それはちょっといい過ぎじゃない?


4月30日の体験塾開講日には、新しくて素敵な空間が完成している予定です。
どんな部屋に仕上がるのかお楽しみに!

2011年4月4日月曜日

明日、札幌で説明会

種まきしなきゃと張り切ったところで、札幌市内の自宅でも種まきをしました。

賃貸のマンション生活でもどのくらい自給的な暮らしが実践できるか、私の今年の個人的なテーマです。この冬、日当たりのいいベランダのある部屋に引っ越したのをきっかけに、家でも種から育ててみることにしました。


長沼コモンハウスの育苗箱ほど高温になることはありませんが、石油ファンヒーターを朝夜2時間も焚けば室温はトマトの発芽に十分です。播種後、9日目で可愛い二葉が開き始めました。今日は外は雪が降っていたけれど、レタスや水菜、その他ハーブを各種蒔きました。


小さな生命が、力強くこの世界でその生を輝かせようとしている。人間界の政治や経済やその他たくさんのトラブルに惑わされることなく、芽を出す時をじっと待ち、やがて太陽の光を浴びながら少しずつ成長しています。焦ったり、落ち込んだり、欲張って背伸びをしたりしない。

震災後、特に今も続く原発の危機的な状況が頭から離れず、失望、怒り、焦燥・・・そんな思いが渦巻いてなかなか生産的な考えに至りませんでしたが、芽吹いた命を見てやっと地に足が着いた感じがしました。


明日は札幌エルプラザ環境研修室でエコビレッジのセミナーと今年の体験塾の説明会を開催します。(19時開始。参加費500円)

このタイミングで行動を起こしたい、そんな気持ちを共有する一人でも多くの方の参加をお待ちしています。

2011年4月2日土曜日

種を蒔こう!

昨年はコモンハウスの寒さと日照不足で苦労した育苗。今年は縁側のデッキを利用して育苗室を作りました。

ビルダーの千葉さんとスタッフの伊藤君が2月の猛吹雪の中、苦労した甲斐あって、室内は日がさすとぽかぽかの温室です。
さらに、伊藤君得意の発酵技術を活用して温床を作りました。去年の米づくりで発生した稲わらや籾殻、田中豆腐店のおからなど材料は身の回りのものばかりです。スタイロフォーム(発砲ポリエチレン)で箱を作り、温床の上に苗を並べて夜は蓋をする。これで外気温は氷点下でも20度をキープすることに成功。ただし、昼間は蓋を開けないと40度くらいまで温度が上がってしまうので要注意ですが。
詳しくは管理人ブログをご覧ください。 育苗室のおかげで今年の苗は順調に育っているようです。坂本先生の北の雫(トマト)も元気そう。

未曾有の震災の影響で、世間は自粛ムードです。今も極度の混乱、不安の続く被災地の人びとに対して、何もできないのは申し訳ない。私もせいぜい募金をしたり、チャリティイベントに参加したりしかできなくて、情けない気持ちになります。

正直、こんなときに呑気にエコビレッジなんてやってていいのかな、と思ったこともありました。でも、みんなで暗い顔をして下を向いていても事態は好転しません。そして、この震災で私たちが何かを学び、将来に向けて決意するべきことがあるとしたらそれは何か。自分なりに改めて考えてみました。


被災地への支援活動は当然急務ですが、今回の復興が長期的になることを予想すると、今エコビレッジが目指しているものを実現させること、つまり持続可能な食や農、地域で支え合い、少ない資源を分かち合うコミュニティの創造が今ほど求められている時代はないのではないか、と思うのです。そのミッションを意識しながら、この季節、今この時に必要なことをやらなくては、そんなふうに感じています。
この季節は1年に一回しか巡ってこないのですから。


「でも、結局原発がなきゃ困るんでしょ」

こんな状況を目の当たりにしても、まだそんな発言をする人もいます。
それなら、原発に頼らなくても、弱い人や地球を犠牲にしなくても、少ない資源で十分安全で豊かな暮らしができることを具体的に示しましょう。アプローチの仕方、創意工夫によってそれは決して惨めで苦しい生活ではなく、思いやりの心に満ちた、創造的で人間らしい生き方にすることができる、と私は信じています。

そうなると、まずは種まきですね。 関東以北の農地が受けたダメージを考えると、北海道の耕せる場所はすべて耕さなきゃ、と言っても過言ではないでしょう。
エコビレッジも、これまでは体験だからと生産性は度外視していましたが、食べ物もエネルギーもすべて他人に依存していた仕組みをできるだけ自給的生活にシフトしていくとしたら、やはり技術もレベルアップしなくちゃいけないなと思います。

今年は頑張るぞ。小さな小さな種から芽が出て、少しずつだけれど日に日に成長している様子を見ていると前向きな気分になりますよ。 放射能の怖さや、原発の問題性を知ることはもちろん大切ですが、知った人びとはただちに行動すべきです。

今、動けない人たちのためにも動ける人は精一杯動きましょう。 みなさん、一緒に種まきしませんか。