2011年5月28日土曜日

畑の教室

5月28日(土)は田植えが1週間伸びたため、急きょプログラムを畑の講義・実習に変更しました。自然相手の活動は、こちらの思うとおりにはいかないことばかり。天気や作物の成長の都合でその日予定していた活動が行えないこともしょっちゅうあります。常にプログラムや日程を変更しながら行わなくてはなりませんが、それでも、塾生の方々に体験していただきたい作業を月1~2回の活動日に合わせられるよう、できる限り調整しながら行っています。



さて、今回の実習内容は「ジャガイモの植えつけ」と「(各自育苗していた)キャベツ・レタスの定植」、そして「ビニールハウスの設営」などです。「ジャガイモの植えつけ」は5月前半に行いたかったのですが、地温が上がらず、土が乾かず、そして体験塾のプログラムがしばらくなかったため、結局この日の活動となりました。本当は畝きりも活動に組み入れたかったのですが、数日前の天気予報では当日雨が降りそうだったので残念ながら当日は植えるだけとなりました。水はけの悪い土壌に対する高畝の作り方は、別な機会に体験していただこうと思います。「キャベツ・レタスの定植」は、4月末に各自が鉢上げを行い、持ち帰って1か月育苗してきた苗を植えました。それぞれ育苗環境が違うため、苗も個性のあるものに仕上がっています(「途中で枯れちゃった…」ものもあったようですが…)。品評会を行いながら、キャベツとレタスを交互に植えていきました。キャベツとレタスは、発芽環境や生育環境が割と似ており、一緒に育てやすい作物です。科が違い養分の競合が起こりづらい上に、雑草や虫をたがいに抑えあってくれるので、いつも<コンパニオンプランツ>として混植することにしています。



「ビニールハウス設営」も、実は先月中に行いたかったのですが、今回の作業となりました(これは天候によるものではなく、単純にコチラの作業が遅れたためですけど)。骨組みはできていたので、今回みんなで行ったのは、最後の大きなビニールを被せる作業。プロの農家さんはホンの数人で張ってしまうようですが、私たちは素人です。参加したメンバー全員(10数人)が声を掛け合い、あっちに回りこっちをフォローし・・・協力し合ってなんとか丁度良く被せることが出来ました。最後は、ハウスバンドで固定し、なんとか完成。こんな作業でも、みんなでやれば案外楽しいものなんですよね。ビニールハウスは、オクラなどの熱帯作物を育てる他、荒天時の作業場所として使っていきます。 午後3時過ぎ、作業が終わる直前になって、雨が降り始めました。ぎりぎりセーフです。



慌てて屋内に移動して、最後は「生物学的視点での作物栽培」の講義です。「作物」とはどのような生物なのか?「栽培」とはどのような行為なのか?を生物学的・生態学的視点から考えてみました。生態系についての知識があることで、栽培にかんする作業の諸々(播種・除草・施肥・病害虫防除等々)も客観的な視点でとらえやすくなるものです。「こうしなければならない」「こうするべき」とマニュアル的に覚えるのではなく、自分の作業がその生態系(畑)や生物(作物)にどういう影響を与えるのかを考えながら行うと、栽培をより深く楽しむことができるのではないでしょうか。 今後、畑作業をしながら、今回お話しした内容を思い出していただき、知識だけでなく「感じ取る」活動に結びつけていきたいと思います

欧州エコビレッジに学ぶ環境テクノロジー

3月の震災以来、人びとの強い関心を集めている環境に負荷を与えないテクノロジー。今回はヨーロッパのエコビレッジで実践されている事例を見てみましょう。


まずはドイツのシーベンリンデンから。ここは人口100人規模のコミュニティですが、エネルギーをほぼ自給し、住民一人あたりの平均排出ニ酸化炭素の量がドイツ国民の平均と比べて3分の1以下だという報告があります。ソーラーパネルによる発電が主なエネルギー源ですが、北ドイツの気候で住宅の屋根に設置したパネルだけでそんなに生産できるのかなと思いませんか?それが適う理由は想像を超えて徹底した節電の暮らし方にあります。3階建てのストローベールハウスを(左写真)なんと電力を使わず2年かけて建設したそうです。自称環境過激派の彼らは、食べ物も動物性のものは一切とらないなど、そのこだわりぶりはすごいです。自ら「ドイツ人だからね」と苦笑していましたが、やっぱりそういうことなんでしょうか・・・。
感心する点は、ストイックにミッションを貫くだけでなく、フレキシブルに対応する合理性やオープン性も持ち合わせており、たとえば子どものいる家族は早く住居がほしいというニーズに合わせて電動工具も市販の建材も使っていますし、ビレッジの計画に当たっては、10年近くを費やして、地元の行政職員や大学の研究者、専門家を招いて公開しながら策定しました。近隣住民や行政ともうまくつきあう努力を重ねています。

スコットランドのフィンドホーンは人口規模400~500人。スピリチュアルコミュニティや成人教育で有名な老舗のエコビレッジですが、エコハウジング、風力発電によるエネルギー自給(全体需要の4割を提供)、コミュニティバスの運行などトータルな環境共生型の住宅開発でも評価を得ています。右の写真は私が2006年にEDE(エコビレッジデザイン講座)を受けたときに4週間宿泊した建物です。屋根の緑化は断熱効果を高めるもの。生物の生息空間にもなり、見た目にも可愛らしいですね。 屋根に水仙やギョウジャニンニクが植栽されていたのには驚きました。


下の写真はリビングマシーンと呼ばれる汚水浄化システム。植物の根に付着する微生物が汚水中の有機物を分解してくれ、ヘドロのような水がタンクを一周してくるうちに臭いも色もなくなっています。もちろん飲み水にはなりませんが、このようなグレイウォーター(再利用水)の利用場面はたくさんあります。
北海道は水資源が豊かなせいで、節水を心がける習慣がないなと感じました。


ウェールズにあるCAT(Centre for Alternative Technology)は、日本でもたびたび紹介されるエコセンターです。


もともとは1960年代後半にエコビレッジとして誕生したものが、80年代になって方向転換をし、環境テクノロジーの研究・育施設として再生しました。今ではほとんどの職員は近くの村から通い、敷地内に住んでいるのはボランティアや研修生だけになっています。交通アクセスの悪い片田舎に位置するにも関わらず、一時期は年間8万人のビジターが訪れ、地球環境問題について学ぶ施設として小さな田舎町の経済にも貢献しているのが特徴です。最近の来場者数は下降気味ですが、大学などの研究機関との共同研究や大学院生の受け入れなどヨーロッパの環境技術をけん引する存在としてさらに成長しています。施設内の建物はどれも環境型の工法をデモンストレーションしており、トイレの汚水や生活雑排水もすべて敷地内で処理していることが一般の人にもわかりやすく表現されています。










このたびコモンハウスで購入したコンポストトイレはCATと同じデザインです。電力を使わず個体と液体を分離することでコンポスト化を早める仕組みは、下水のない農山村や震災などの非常事態にも有効です。以前自作したものは個液分離が上手にできなかったので、今回設置したGreenly森のトイレは期待しています。液体はそのまま薄めて液肥に、コンポストは材料の状態や温度湿度によっても変わるので実験をしながら様子をみる予定です。


2011年5月15日日曜日

サンガーデン見学

エディブルガーデン2回目は恵庭のサンガーデンさんで行いました。講師はもちろんサンガーデン常務の土谷美紀さんです。

私たちの自給農業とは目的も技術もまったく異なるので比較になりませんが、プロの生産現場はまるで工場のようでした。








花の種は野菜に比べて極端に小さく、育苗期間も長いので特別な配慮が必要です。種まきはコーティングされた種子を機械でプラグに蒔きますが、定植は人手でしかできません。この作業は周りがどんなに急いていても、黙々と同じペースで集中してやれる人が向いているとか。「小さな苗のそばで走るな」と土谷さんが叱られたという話は、まるで赤ちゃんを相手にするときのようですね。


育苗中は5重のビニールで厳重に温度管理。品種によって最適温度や日照条件が違うのですから大変です。6月半ばに出荷予定と書かれているベゴニアの種まきはなんと昨年の12月。半年かけて、人手とエネルギーをかけて育てることに感心しました。


施設見学の後は楽しい寄せ植えコンテナづくり。水やりをマメにできない私のような横着者にはプラスチックのプランターが向いているみたいです。土を入れる際には空気が十分入るように注意。野菜と花の組み合わせにも、高さ、葉張り、色などいろいろなバランスが大事です。



「今年はゴーヤが植えたい」「菜の花も」「みょうがは作れる?」次回の定植デザインについても話し合いました。今から夏のガーデンを思い描くとわくわくしてきますね。なかなか気温が上がらず心配ですが、一気に暖かくなることを期待しましょう。

2011年5月11日水曜日

暖かくな~れ!

3月末に撒いた我が家のトマト(北の雫)の苗。 まあまあ順調ですが、やはりずっと室内では日照が足りないのでしょう、あるいは水をやり過ぎているのかもしれません、ひょとひょろと背高のっぽになりつつあります。坂本先生の苗は、(種まきは3日早い)すらりとはしていますが背はやや低く、節間が短くもっと腰がしっかりしていました。
温度の上げ過ぎ、水のやり過ぎは禁物だそうです。あまり恵まれ過ぎた環境では人間と同じでひ弱な作物になるということですね。



今日は束の間の晴れ間だったので、苗をベランダに出して日光浴をさせました。大事をとって衣装ケースに入れてビニールで覆ってやります。夕方見ると、とても元気そう。やっぱり太陽の光がほしかったのね~。





あ~、それにしても早く暖かくなってほしいよ~。

去年の春も、寒い寒いと気をもんでいたのを思い出します。田植えも予定より1週間延期しました。今年は低温に加えて雨が多いため、畑が乾く暇がありません。長沼の近所の農家さんも、いつもの年ならとっくに植え終わっている芋や玉ねぎが、機械が入れず植えられないと嘆いています。自然相手の仕事なのはわかっているとはいえ切ないです。


街中ではようやく桜が満開になり、近くの円山公園は花見客でにぎわっています。畑にも早く本格的な春が来てほしいと心から願う毎日です。

2011年5月8日日曜日

持続可能な電気の話

今日のテーマは「持続可能な電気の話」。



講師は元北電職員で、現在は企業向けの環境コンサルタントを自営されている岩井尚人さんです。電気業界内部の話から、ご自身が自宅で行っている具体的なエコエネルギーの実践まで幅広く、質問があちこち飛び交う講義になりました。


札幌市内にある岩井さんのお宅はソーラーパーネルと小型風力発電と薪ストーブで、約3割の電気を自給されています。面白いのは生産した電気は売らずに蓄電し、北電分と自給分をコンセントで使い分けているところ。おかげで周囲が停電しても最低限の電気は確保できるそうです。

住宅街の限られた敷地では100%の自給は難しいし、自然エネルギーは確かに不安定だから大事な電源としては使えない。でも最低限の電力を自力で確保することで、完全な電力会社への依存から一歩自立への道を歩めるのです。「この電気は絶対必要」「これはそうでもない」と、必要な電気の量と質を改めて見直すことも大事ですね。ライフラインは北電にお願いし、なくてもそんなに困らない部分は自力で。家庭だけでなく、産業界含め社会全体でこの作業をやったら、どうしても24時間必要な電気量はかなり減らせるのではないでしょうか。


私も原発には反対です。最初から処理のできないとわかっているものを造るのは、コストや効率の問題云々の前に手を出してはいけないものだと思っています。ただ、原発問題について、放射能の危険性や、政界、経済界の汚さを糾弾することに終始し、自分たちは被害者面をして反対を唱える立場はとりたくありません。市民は本当に一方的な被害者でしょうか。もちろん、政治やマスメディアに動かされてきた面は大きく、あるいはもっと大きな力が背景にあるという予想も正しいのかもしれませんが、市民がその社会に依存してきた事実も明らかです。そして今なお多くの市民が「便利な生活のためには仕方ない」と思っていることも。それに、反対運動が、もし自分の安全を守るだけの視点で行われるなら、他国の人びと(特に貧しい国の人びと)にその負担がいく危険性があります。

原発を止められるかどうかは、私たちが次のビジョンを描けるか、そしてその行動を起こせるかどうかにかかっているでしょう。

岩井さんは「反対を目標にしてスタートしても動かない。仕組みを変えることで生活を変えなくても減らせる電気、工夫で楽しく減らせる電気はたくさんある。これまで両手で北電の電気にぶらさがっていたものを片手だけ離すことができるようになり、次の段階としてネットワークにより地域で自立できるようになっていけば、結果的に原発は要らなくなる」と言われました。


持続可能はエコビレッジのテーマ。食と同様、エネルギーもその柱の一つとして、できる限り自給する、残りは周囲とネットワークしながら得ていくことで、地域単位で自立するスタイルを創っていきたいと思います。



さて、午後の畑コースではその食の自給について追及します。今回のメインテーマは『土』。参加した方々の「土のイメージ」や「土にかんする知識」などを交流した後、いつものように坂本一雄先生のお話を聴きました。土に対して多くの方が、「母なる大地」というイメージを持っていますが、おおむね漠然としたイメージでしかありません。「大地(土)は母」、それが実際どのようなことなのか、ご自分の経験を踏まえながら具体的な解説をされる坂本先生のお話に、みなさん「なるほど」という表情で耳を傾けていました。森林の成り立ちや人間の作った畑のあり方。どのように(何によって)土が作られていくのか。化学肥料や農薬が土に与えるダメージについて。有機栽培と自然農法の「考え方の違い」等々・・・。


坂本先生の畑は、有機質の肥料や堆肥すら使用していません。少量の干し草を土を被覆する「資材」として使うのみです。土を肥やすため、また植物に与える「肥料」ではなく、「資材」として使うという点が、今回のポイントであったのかもしれません。坂本さんの「干し草で(森林に近い)木漏れ日をつくる」という表現に、参加した方々も深くうなずいていました。みなさん、土に生息する小さな小さな生き物たちの視点になっていたのではないでしょうか。



実習は、予定していたイモの植え付けが雨続きで土が乾かないためにできず、キヌサヤとインゲンの播種のみを行いました。作付け準備が思うように進まない今年の春。近所の農家さんも嘆いています。月に1~2回しかない畑の実習日が天気によって左右されるのは、仕方ないこととわかっていても困りものです。今日行えなかった作業は、後日臨時で集まっていただくことにしています。

2011年5月7日土曜日

コミュニケーション演習

「何でエコビレッジでコミュニケーション?」と思う人もいるかもしれません。でも、エコビレッジは集団の取り組みですから、その運営にコミュニケーションは重要です。また、限られた資源をみんなでシェアすることはこれからの世界にとって不可欠な考え方ですが、それも関係づくりが上手くできなければストレスが原因でやっぱり破たんするかもしれません。優れた技術も制度も、活かすためにはそれを運営する人のモチベーション維持や合意形成など、やっぱり組織づくりが欠かせないのです。


私が訪ねたヨーロッパのエコビレッジでは、どこもその部分を意識して話し合いのルールづくりやトレーニングを重ねていました。個人主義、民主主義の徹底したヨーロッパ人は、きっと自己主張も合意形成も得意なのだと思ったら決してそうでもなく、上手く表現できずにストレスを抱えたり、自己主張が激しいだけにいつまでもたっても何も決まらない、そんなコミュニティもたくさんありました。「なーんだ、日本人と同じなんだ」と思ったものですが、違いは、日本人がそのようなトラブルを「仕方ないこと」として諦めたり、トラブルを避けようとして見てみないふりをしたりするのに対して、彼らはコミュニケーションや合意形成の難しさを自分たちの弱点と客観的に認識し、積極的に改善しようと試みることです。何年も一緒に住んでいるメンバー同士でも、重要な会議には外部からファシリテーターを招いたり、メンバー全員が外でコミュニケーション研修を受けたりして努力をしていることに感心しました。

今日のワークショップは、初めて出会う人同士が自分自身をいろいろな角度から表現し互いに知り合う、そして共同作業を通じてグループとしての意識づくりをすることを目的に行いました。講師はNPO法人コンカリーニョの斉藤ちずさん。普段の会話ではなかなかしないような情報交換ができ、寸劇ワークではそれぞれの隠れた才能を垣間見たり、思いを知ることができ、単純にとても楽しかったです。

コミュニケーションワークの成果と言えるでしょうか。夜はチームワークよろしく、みんなでコモンハウス付近に自生している野草を使ったフルコースで晩御飯。ギシギシのイタリア風炒め物、フキの煮物、土筆の卵とじ、エゾニュウのおひたし、あさつきのおひたし、キクイモの酢の物やジャガイモのサラダはエコビレッジ産ですが・・・畑にはまだ実りのないこの季節でも充実のメニューで豊かな自給生活が楽しめることがわかりました。

夕食後は、ドキュメンタリー映画『アレクセイと泉』を鑑賞しました。舞台は、チェルノブイリ原子力発電所から約180kmの地点にあるベラルーシの小さな村、ブジシチェ。事故後の避難勧告によりいくつもの村が地図から消えていく中、この村でも当然、建物からも畑からも森のキノコからも放射能が検出されるのですが、不思議なことにこの「泉」はまったく汚染されていないのでした。 決して「放射能汚染に苦しめられる人々」「放射能とたたかう人々」を描いた映画ではなく、淡々とした、見ていて退屈にも感じられそうな村の日常を描いたものです。毎年畑を耕し、イモを収穫し、豚やガチョウを飼い、冬には籠を編んで過ごす自給自足の生活。そして、時に得られる現金収入で必需品を飼う傍ら、こっそり買ったウォッカを大事そうに抱えるおじいさんたちの姿など・・・(これが非常にかわいらしい)。ドラマチックではありませんが、彼らの生きる姿は「生きるとは何か」「豊かさとは何か」を伝えてくれているように思います。同じような問題を抱え、生き方の転換を迫られる現在の私たちに、重要なヒントを与えてくれているのではないでしょうか。

泊まりのプログラムは、みんなで食べたり寝たりする時間も互いを知り合いグループとしての結びつきを強めるのにとても有効です。
一気に仲良くなった会員さんたち、夏野草バージョンのフルコースもやりたい、と今から意欲満々でした。

2011年5月5日木曜日

エディブルガーデンコース初日

5月5日、ぐずついた天気の連休中に、この日はほっと訪れた晴れ間に恵まれました。







野菜と花のコンビネーションで美しく機能的なエディブルガーデン。講師はお馴染みサンガーデンの土谷さんです。土谷さんは、切り花中心の花卉業界で苗づくりはマイナーな存在であること、品種改良のほとんどが欧米中心で日本では育種で商売が成り立たないことなど、園芸業界の裏話を聞かせてくれました。



ドイツ人が細かな育種に強いとか、イングリッシュガーデンがイギリスの園芸家が新潟県を訪問したときに見た田園風景を元にイメージされたという説など、異国情緒ある話も。北海道の気候は本州とはかなり異なるので、庭園文化も異なって当然です。土地の風土や文化に溶け込み、かつオリジナルな創造活動として庭を捉えてみたい。ここでは園芸品種と野菜を上手に組み合わせ、周囲の田園風景の中でインパクトを与えるデザインで、集う人びとが楽しめる空間を表現すことを目標としています。





外作業の第一段階は天地返しをして土を乾かし、空気を入れてやるところから。粘土の強いここの土壌は、掘っても水分が多いと大きな塊になってしまいます。


「一見作物栽培に向いてないような粘土ですが、ここの土は水分や養分をよく蓄えるんですよ。おかげで去年のマリーゴールドは他では見ないくらい立派にこんもりとした形になりました」と土谷さん。「ペチュニアはダメだったけどね。ペチュは諦めましょう」野菜と同じで適地適作が大事なんですね。





さっそく生えてきたスギナもこの機会にマメに抜きます。見栄えが重要なガーデンでは除草剤も仕方ないかなと思いつつ、手作業でどのくらい効果があるのか、もう少し頑張ってみたいと思います。みんなでスギナを食する研究をしましょう。

最後はマリーゴールドの種まき。「卵のパックを使えば簡単」と土谷さんが必殺技を教えてくれました。
しっかり灌水し蓋をしてそのまま置いておけば3日で発芽するそうです。簡単に蓋ができるところが優れものですね。

2011年5月4日水曜日

開講特別講義 新得共働学舎から宮嶋望さん

開講特別講義として、十勝新得の共働学舎から宮嶋望さんをお招きしました。お馴染みメノビレッジ長沼の月例勉強会と共同開催です。




北海道にはまだ「エコビレッジ」の看板をあげているコミュニティはありませんが、実は新得の共働学舎やメノビレッジは、実質的なエコビレッジの先輩、つまり、環境に負荷をかけない食と農を実践し、そしていろいろな人が互いに助け合い、資源やモノをシェアしながら経済的にも小さな規模で、でもちゃんと自立しているコミュニティとして学ぶ点が多いと思います。有機的な食物生産はもちろんですが、共同農場やエコハウジングのプロジェクトにはない、コミュニティ生活や持続可能な経済システムなどのソーシャルデザイン面でも、共働学舎やメノビレッジの取り組みは、エコビレッジの要素がバランスよく入っています。

新得共働学舎は1978年、「自労自活」を掲げ、農場30haを譲り受けて、宮嶋さんをはじめ6人のメンバーが立ち上げました。当時は無一文だったそうです。今では農場が96ha、メンバーも70人に拡大されました。メンバーの約半数が何等かの障がいや社会的自立に困難を抱えた人たちですが、本人の自主性を全面的に認めた仕組みで運営しています。ルールや規制は作らない、本人が「やる」と決めたことに責任を持つ、それぞれのメンバーが自らの人生を主体的に捉え、自ら課した任務を全うすることが大事、と宮嶋さんはおっしゃいます。


このようなソーシャルファーム(障がいのある人びとの自立を支える社会的企業)の動きは全国でもありますが、生産性の低さから実質的な経営は寄付金や補助金で成り立っているチャリティ的な団体が少なくありません。宮嶋さんは、メンバーのゆっくりなペースをそのまま活かして市場で勝負できる、という視点でハード系のナチュラルチーズを生産品に選びました。そして自ら仏式製造のチーズづくりを学び、独自のエネルギー理論に基づいて圃場や施設を建設したのです。



共働学舎では、自然素材の畜舎と大量に埋められた炭が、エネルギーの流れや微生物の動きを活発にしています。「流れる水は腐らないが、よどんだ水は腐る」ように、エネルギーの流れによって地中に水道が通り湿気地の改善もできるそうです。牛舎の下にも炭埋めをしたおかげで臭いもハエもほとんどわかない環境になったと宮嶋さん。それらの研究努力が実って、共働学舎のチーズは国内外で金賞、グランプリを獲得しました。今では生産が追い付かないほどのマーケットがあるとか。



もう一つ、私が共働学舎で着目しているのは、オーストリアの哲学者シュタイナーが提唱するバイオダイナミック農法です。バイオダイナミックによる農場は、ヨーロッパでいくつか見学しました。パーマカルチャーや福岡式自然農と並んでヨーロッパの有機農業の一つの主流だと思われますが、少なくとも私が視察した限りでは、バイオダイナミックは最も生産性が高く、どこも美しく管理されていて、以来興味を持っていました。牛糞を牛角に入れて混ぜる儀式(と呼ばれます)などオカルトっぽい雰囲気に躊躇したのと、シュタイナーの本が難しくて読めなかったことが理由で、これまで真面目に勉強したことがなかったのですが、宮嶋さんはそれらが単なる「おまじない」ではないことを科学的に説明してくれました。


バイオダイナミックは土と植物の関係性だけでなく、植物のエネルギーに影響を与える天体の動きにも着目した理論です。日の出前の波長の短い光はエネルギーが高く、酵素を活性化し、植物を活動させる。なるほど、だから農家は早起きじゃなくちゃダメなんですね。
チェルノブイリの原発事故の後も、バイオダイナミック農法で栽培された作物からは放射性物質が検出されなかったという報告もあるそうです。エネルギーや微生物の活動が活発で、植物体が十分な栄養素を備えていれば不要なものを取り入れないということでしょうか。



悩みやトラブルを抱えた人たちを「社会が解決できない問題を身をもって示してくれるメッセンジャー」と呼び、常に迎える姿勢を持っている宮嶋さんと共働学舎の取り組み。技術面、精神面、社会面で多いに学ぶところの多いプロジェクトだと改めて思いました。