2010年7月13日火曜日

0711 畑の教室

家庭菜園が人気の昨今、本屋に行けば野菜栽培のガイドブックはたくさん並んでおり、「あれをしなさい」「これをしなさい」と懇切丁寧に教えてくれます。どうも作物の調子が悪いと思ったらホームセンターに行けば「○○には××を与えて」と言われ、ついいろんなものを与えてしまいますが、果たして本当に必要なの?と疑問に思うことも。今回は、夏野菜の手入れの中でも何か必要で何が不要か、という具体的な方法について坂本先生に伺ってみました。

結論。先生曰く、「適正な技術は『何のためにどのようなものをどれだけ作りたいか』に寄る。そして何が必要かは作物とよく相談して決めなさい」ということでした。

たとえば、一定の時期に質のそろったものを収穫したければ、プロ農家のような技が必要ですが、自給用であれば多少の大きさのばらつきは問題ないし、収穫時期だってずれていたほうが常に新鮮なものを食せてベターだったりするわけです。販売用としての作物の場合、出荷作業や運搬などいろいろなことを考慮した質が要求され、それにあわせた機械や保存施設を持っていますが、自給ファーマーの私たちにはその環境も必要性もありません。それぞれの栽培目的や環境に合った作り方があるはずです。

自然農では基本的に農薬はもちろん、肥料や資材も極力使わず、自然の力やバランスを活かした栽培をします。しかしながら、それは「何もせずに放っておく」のとは異なります。「収穫がなくてもよい」なら別ですが、年間を通じてできるだけ自給しようと思ったら、作物の成長にあわせた適当なタイミングで適当なケアは不可欠。たとえば、通風や日照をよくするための最低限の除草や整枝は必要です。トマトも野生種は地這いの多年草だし、芽かきをしなくてもできますが、品種改良をした今のトマトは、やはり適度に整枝してスペースを作ってあげたほうが、病虫害を受けにくく熟すのも早いそうです。一方、ジャガイモは芽かきをすると大きな実が少数取れるけれど、いろいろな大きさがあっても構わない人には不要な作業と言えます。

できるだけ上手にたくさん収穫したい。それが高じて「もっとたくさん」と欲を出すことは禁物。堆肥を入れれば実りも期待できるけれど、いくら有機と言えども窒素過多になって生理障害を起こしたり、害虫を招いたりする弊害もあります。また、自然農薬だって多様すればやはり微生物のバランスを崩す危険性もあるそうです。

「有機や自然農だからと言って、収量が半分でもいいとは思わない。種の生命力をきちんと引き出してあげれば、十分な収量が得られる。(実際、先生の畑では慣行農家と同程度かそれ以上の収量をあげています)ただ、その土地にふさわしい収量を心得、あまり欲張ったり人間の都合に合わせようとすると失敗します」と坂本先生。

微妙な自然界のバランスを知り尽くし、作物や土の中の微生物たちの視点で最小限のケアをしてあげる、その恵みを謙虚にいただいて自給自足する先生の技の深さにはいつも感心させられます。
今日は1期生の自主研究農場を観察し、アドバイスをいただきました。
「全般的に過保護ですね。マルチは霜害には有効だけど、地温を高くしすぎて微生物を殺してしまう危険もある。藁も土に返すことを考えたらもっと薄く引いたほうがいい。自分と作物という関係だけでなく、作物と土や他の生き物との関係をよく見てください」と先生。

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