2011年6月19日日曜日

アイヌの世界観と暮らし

6月の座学は「アイヌの世界観と暮らし」について。講師は北海道大学アイヌ先住民研究センターの北原次郎太先生。北原先生は白老の民族博物館から北大の准教授として昨年就任されましたが、生まれは東京、育ちは埼玉だそうです。(実は私も同じなのでびっくりしました)

アイヌ文化と一言で言っても、東北、樺太、ロシアなど各地で言葉も暮らし方も異なります。現代のいわゆる先進国では、機械やメディアの発達のおかげで、南も北も変わらず、どこでも画一的な生活を送っていますが、自然を基調にした暮らしは当然その土地の風土気候に左右されます。ボタン一つですべて同じ成果を出すような装置ではなく、シンプルな道具を用い、人間の側が腕を磨いていろいろなものを作り出すという、真逆の発想です。アイヌは狩猟民族と知られていますが、実は加工品を通した交易もかなりさかんだったことがさまざまな史跡からわかっています。彼らの活動は私たちの想像を超えて広範囲にわたり、異文化交流にも積極的でダイナミックに変化を遂げてきたようです。

アイヌ文化の特徴は「カムイを暮らしの中に招き入れる思想」と北原先生はおっしゃいます。植物や動物、自然界のあらゆるものにカムイを見出し、採取や利用を通して共生していく考え方です。西洋の文化は、人間界と自然界を完全に二分し、自然を一方的に支配したり保全したりする発想に基づいていますが、むしろ自然を積極的に活用しながら神として敬うのが先住民の伝統文化。昔のアイヌの人々は食べ物をはじめ、衣料、染料、建材、薬品など生活に必要なものを約500種の植物から手に入れたとか。山、川、海は経済活動の基盤でありつつ、しかしながらカムイへの感謝の気持ちがなくなれば失ってしまうものだったのです。




北原先生は、アイヌ民族の世界観をよく表しているいくつかの物語を聞かせてくれました。先進国の行き過ぎた開発や人間の過信を戒めるようなストーリーがとても印象的でした。北海道の持続可能な暮らしや社会を模索する上で、ヒントになる考え方だと思います。

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