2011年8月7日日曜日

下川で森の合宿





8月の宿泊研修は下川町まで足を伸ばしました。



下川町は、地元の資源である森を活かした森林体験プログラムと、環境負荷を減らすまちづくりの取組みがさかんで、道内でも先進的な環境モデル都市として知られています。昨年は「炭焼き体験」のプログラムに下川町森林組合から講師を招いて長沼で実習を行いました。炭は畑の栽培その他で自給ライフには貴重な資材なので、単体でやっても有益なプログラムですが、今年は、炭になる前の森林資源がどう育てられ、どんなふうに活用されているのかを幅広く学習しようと下川までやってきました。

さて、この週末はこの夏一番の猛暑でしたが、体験の森に入ると、中は気温が一気に5度くらい下がったようにひんやりしています。NPO法人「森の生活」の森林体験ガイド麻生さんにリードされ、まずはトドマツの枝を間伐する作業から。枝の落とし方を教わり、葉っぱの匂いをかいでみると清々しい芳香にみな感激。これを蒸留して精油をとるのです。カラマツやエゾマツでは精油の生成量が8分の1ほどとか。しかもトドマツのほうが香もずっとさわやかな感じがします。森のアロマを思い切り吸い込んでしばしリラックス。とったトドマツは、森の生活が管理をしている宿泊研修施設ヨックルに持ち帰り、卓上の蒸留装置に葉っぱを詰め、精油を抽出しました。熱を加えて蒸気の中に放出された香のエッセンスをパイプに溜め、水蒸気を液化させます。精油は水より軽いので上に浮き、下に蒸留水がたまります。その蒸留水を慎重に抜いて、残った精油を大事に大事にビンに入れました。製品になったものと比べるとまろやかな香りです。蒸留水は化粧水として使ってもいいと聞き、さっそく使ってみました。



蒸留を待つ間はお約束の炭焼きです。昨年に続いて下川町森林組合の渡辺さんに指導していただきました。ちゃんとした窯がなくても、ドラム缶を設置する手間をかけなくても、ただ地面に穴を掘って木材を並べ、トタン板で蓋をするだけで炭が焼ける、伏せ焼きという方法です。まずは材料の丸太を手鋸で切る、この作業が大変。汗だくになったところで「では文明の利器に頼ってみましょうか」とチェーンソーの登場。切った丸太を穴の中に敷き並べ、煙突とトタンを設置したら土をかぶせて火をつけます。後はせっせと扇いで温度をあげること4時間あまり。寒い季節なら芋でも焼いて火を楽しむところですが、今日はこの炎天下。温度も上がっているのかどうかわかりません。本当は煙が透明になってくるまで高温にしなくてはいけませんが、タイムアウトで蓋をしました。翌朝、どきどきしながら開けてみると・・・。うーん、3分の1というところでしょうか。入口近くは炭化し、奥はまだ火が回っていないという状態でした。やはり密封する前の温度が低かったようです。でも、この方法なら準備が簡単な分、もともと歩留りが低いと想定してかかればそれなりに効果的です。長沼に帰ってからいろいろ工夫してやってみようと思います。

2日目は森の生活代表の那須さんに、下川町の森林資源を使った加工所やエネルギー施設などを案内していただきました。下川は昔から林業はさかんでしたが最近まで下川産の材料を地元で使っていなかったとか。価格だけで競争すればやはり外国の大量生産にかなわないのでしょう。それが1951年に台風で倒れたカラマツの利用方法としての炭づくりをきっかけに、今ではさまざまな森林資材の加工、活用によって、地材地消を進めています。針葉樹の丸太や集成材、白樺の間伐材(といっても太い!)で作る割り箸、トドマツの葉っぱは精油をとるだけでなく乾燥させて舗装材にしたり、抜根した廃棄物も燃料にしたりして、最後の最後まで使い尽くしています。


ここで考えさせれるのが、木を植えながら森を育て、材として使っていくという、循環型の森づくりが非常に息の長い事業であり、経営的な自立が難しいという点です。いくら植林をしても、育てるコストを生み出すためには、資材を活用して収益をあげなければなりません。巷には植林だけ喜んでやる人がたくさんいますが、それを育てる苦労や費用を負担する気はないように見えます。

たとえば、割り箸を例に考えてみましょう。割り箸は環境保全主義者から目の敵にされがちです。確かに「使い捨て」という非難はありますが、それほど単純な話ではないように思います。建材になるような樹木を切って作った割り箸を海外から輸入してくるケースは別ですが、国内の森林を育てるプロセスで発生する材を有効活用するには、むしろ割り箸も日本の古い文化としてサポートするべきではないでしょうか。


環境モデル都市、下川。チップボイラーを公共施設や町営住宅に使ったり、地熱やペレットボイラーを備えた環境共生型住宅でエコ体験イベントが開催されたり・・・。行政、NPO、森林組合がリンクしながらいろいろな活動をお互いに支えあっており、まちづくり全体に広がっていました。暑かったけれど、実り多い合宿でした。



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