体験塾最終回の座学講師はエコビレッジがいつもお世話になっているメノビレッジのエップ・レイモンドさんでした。レイさんは、メノナイト教のコミュニティで育ち、若いころ、急激に大規模化するアメリカの農業がコミュニティの人間関係や地域の自立を崩壊たらしめる様子を見て、その在り方に強い疑問をもち移住を決意しました。現在、家族や会員さんに支えられながら長沼町でCSA(Community Supported Agriculture)を営んでいます。
「15年前にこの土地にやってきたころは、言葉もわからず肥料袋の表示も読めず苦労したけれど、近隣の方にいろいろと助けてもらった」レイさんは当時を振り返って話します。いい農家になるということは、作物を上手に作ることだけでなく、隣人といい関係を作ること、そして社会をよくしていく活動に携わることも重要だと、地域の交流行事や市民活動にも積極的です。
「農家は食べ物すなわち人間の生命の源を作る人。農地は自然や他人との関係をどうやって育んでいくかを学ぶ大切な場所」。だから、農家を商品を生産するという役割で括り、食べる人を消費者と呼んでただ「買う」人にしてしまっている現在の消費社会に大きな抵抗があるとレイさんは言います。
また、農地は食べ物を恵んでくれる場所であると同時に、様々な人の出会いや学びの場でもある。だからメノビレッジでは、研修生やボランティア、幼稚園児、近隣の人々などいろいろな人を気持ちよく迎える場所にしていきたいとも話してくれました。
さらにレイさんは、近代の政治や経済が、小さな地域単位の文化や個々の人間の幸せをまるで無視した全体主義的な発想に基づいていることを指摘。伝統的なかつての地域の文化や人々の知恵は、世代から世代へ暮らしの中で経験的に受け継がれていましたが、今ではその流れが閉ざされ、効率という視点だけで全体を画一的に統治しようとする政治の影響で、意識的にそれらを継承しよう、育てようと思わなければ完全に失ってしまいます。
最後にレイさんは、問題に異議を唱える反対活動も重要だけれど、一方で日々の生活の中でそれらにどうやって対応しながら、自分が現実的にどうよく生きていくかを考えることも大事であることを強調しました。毎日の生活の中で意識しながら隣人や地球とのいい関係を築いていくこと、それがよい社会を作ることであり、よい政治の基本だとレイさん。メノビレッジの人びとが作物を作ることは、まさにその繰り返しなんだなあと、感心させるお話でした。
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