2011年11月23日水曜日

農とともに歩む社会(講演エップレイモンド)



11月23日の体験塾の座学テーマは『持続可能な農と社会』。講師として、メノビレッジ長沼よりエップ・レイモンドさんと荒谷明子さんをお招きしました。
 アメリカ人であるレイモンドさんが自国の大規模農業の在り方に疑問を持ち、カナダでのCSA農業(地域で支える農業)を経て長沼で現在のメノビレッジを作り上げる経緯から、国を超えた食糧生産や経済の問題を感じさせられました。メノビレッジでは「安心・安全な野菜を作ることを目的としてはいない」とレイモンドさんは言います。大切なのは土づくりであって、その結果として安心な野菜が生産できるのだという考え方です。「栄養の循環」「お金の循環」をあくまで思いやりの届く規模にすること、つまり持続可能な地域社会づくりを活動の目的としているとのことでした。今後の活動の広がりとして、設立に向けて動き出しているNPO法人についてもお話ししていただきました。

実習では、「納豆づくり」と「もみ殻燻炭づくり」を行いました。どちらも稲の副産物を利用した活動です。
納豆は、稲わらについている野生の納豆菌を利用して作ります。手順としては、稲わらを束ねた「わらづと」をつくり、沸騰させた湯で10分ほど煮て殺菌した後、蒸し大豆を入れて保温。発泡スチロールの箱に湯たんぽを入れて、約40℃を30時間ほど保ち、納豆菌を培養するのです。ちなみに、使った稲わらと大豆は、自分たちで育てたものです。1日で行う実習では完成まで至らないため、今回は前日に仕込んでおいたものを最後に取り出して味見をしました。稲わらの香りが少し残っていますが、なかなか美味しい納豆が出来ていました。自分で仕込んだわらづと納豆はお持ち帰りいただき、自宅で保温を継続してもらいました。

今年獲れたお米のもみ殻を使って、燻炭づくりも行いました。 燻炭は、畑の土壌改良や段ボールコンポストの資材になるほか、鶏のエサに混ぜるなど様々な用途がある優れものです。せっかくもみ殻がたくさんあるのですから、自分で作らない手はありません。畑の中で小さな焚火をし、燻炭器をかぶせてからもみ殻で覆います。中から炭化が進むので、最初は撹拌しながら様子を見、全体に炭化が進んだところでしばし放置します。1時間後、見事に燻炭が出来上がりました。

昔から続いてきた「農」は、決して作物を生産することだけではありませんでした。栽培によって生まれる副産物も次の活動に利用しながら、すべてを連続させ、循環させていたのです。それはもちろん、「自給」が中心だったからこそできたことでしょう。 専門家・分業化が進んだ社会がつくり出してしまった「無駄」「廃棄物」という概念を再び生活の循環に戻していくための知恵をこれからも学びたいものです。

2011年11月5日土曜日

秋の味覚を味わう

11月5日のプログラム、テーマは「秋の味覚」でした。
まず、午前中は鮭トバづくりから始まりました。ジャガイモなどの畑の幸との交換でいただいた“秋味”をみんなで3枚におろし、まずは塩漬けにします。 鮭トバづくりの下ごしらえとしては、15%程度の塩水に一晩漬け込むのが一般的なようですが、今回は直接塩をすり込んだ状態で4時間ほど保管する方法で行いました。

その後は畑に出て、ニンジンやダイコン、ゴボウ、ネギなど「秋の収穫作業」です。 土が固いためかダイコンはなかなか大きいのができないのですが、どれも瑞々しくて美味しいものが獲れます。6月に播いたニンジンやネギも、香りの強い立派なものがたくさん獲れました。が、何と言っても今回の収穫のメインは「ゴボウ掘り」。北海道弁で、子どもが駄々をこねることを「ゴンボ(ゴボウ)掘る」と言いますが、ゴボウ掘りはまさに手に負えないほど大変な作業です。特にこの畑はかなり粘性の高い土なので掘るのは本当に大変なのですが・・・この手の作業は、何故か気持ちが乗り始めるとどんどん体が動きます。「もっと上手に掘ってキレイなゴボウを収穫しよう!」という気分になってくるのです。掘り上げたゴボウは、土の性質には合っているのかエグみが少なく生で食べても十分美味しいものでした。

昼食のメインは、先ほどの鮭の「アラ」を使った「アラ汁」です。
ダイコン、ニンジン、ゴボウ、ネギ、ジャガイモといった具もすべて畑の産物、味噌も昨年仕込んだ手前味噌で、かなりの「高自給率」な昼食となりました。
もっとも、「自分たちで育てて収穫した野菜たちを食べる喜び」は、自給率云々と言った数字の話よりもずっと貴重な気もします。畑から掘って雨水で洗っただけの野菜をかじった時の、刺激的な香り、味覚が伝えてくる「生命力」。それらを感じることは、何にも替え難い「収穫」なのかもしれません。

午後のプログラムの前半は座学。『人間と農』と題して、人類の食料調達の歴史をあらためて学びました。 長い狩猟採集時代を経て「農」を獲得する経緯やそれによって得たもの、失ったものを知ることは、これからの人間の在り方を考えるときの手がかりになるはずです。 近代の「化学化」「機械化」が進んだいわゆる大量生産型の慣行農業に多くの問題があることは事実ですが、単純に化学肥料・農薬が悪いなどとは言えないことも、農耕が生まれて発展した歴史を思い起こすと見えてくるのです。客観的な視点で歴史をとらえた上で、「ではこれから自分たちがどうしていけばいいのか?」を考えることが重要なのでしょう。

午後の後半は「切り干し大根づくり」でした。
先ほど収穫した大根を千切りや輪切りにし、干し網の上に並べます。非常にシンプルですが、大根がたくさん獲れて冷たい風が吹きつけるこの時期ならではの作業です。 包丁づかいが達者な方が揃っているので、あっという間に大量の仕込みが出来ました。 午前中に塩をすり込んでおいた鮭も、軽く水洗いして一緒に干して、すべての仕込みが終了。 後は乾燥を待つばかりです(毎日、撹拌するなどの作業はしていきます)。

案外簡単にできる保存食づくり、「家でもやってみます」という感想が多かったことを嬉しく思いました。 体験塾のプログラムは、単なる知識ではありません。あくまで日常に結びつけていくためのものだと考えています。 札幌などのアパートやマンションのベランダで、みんなが干し野菜を作っているなんて、素敵な風景だと思いませんか。