2012年2月11日土曜日

北海道エコビレッジ推進プロジェクトNPO法人設立と会員募集

昨年から準備を進めていた北海道エコビレッジ推進プロジェクト(略称HEPP)のNPO法人化ですが、ようやくこの1月31日に正式に設立されました。

2009年に開設して以来、体験塾を中心とする啓発・研修活動をメインに行ってきましたが、法人化をきっかけにいよいよ北海道にエコビレッジを建設する動きを開始します。と言っても、まだ用地も取得していないので、すぐに建設工事が始まるわけではありません。2012年の目標は道内にエコビレッジを建設するための「基本構想」を策定することです。

具体的には約4haの農地をモデルにして、20~30人の住民が住み、働くことを想定した土地利用、建物のデザイン、エネルギーや汚水処理などの技術検討、住民の生計を支え地域へ還元するための事業計画をたてます。
目標は「住民の食べ物、エネルギー、仕事の約7割を自給する」こと。7割は、実は当てずっぽうな数字ですが、ヨーロッパのエコビレッジの中には実際9~10割近い自給をしているところもあるので、まるで無理とは言えないでしょう。雰囲気だけの農的暮らしではない、本気で自給を目指したい。でも、自分たちだけの核シェルターを作るように閉ざされた場所を作ることがねらいではありません。100%の自給よりも、地域で支えあう関係を作るほうが、より広い意味で自立することができるとも言えます。余剰分の食料やエネルギーを支援者と分かち合ったり、地域の雇用や活性に役立つような相互連携の視点はエコビレッジには欠かせない要素だと考えています。また、環境負荷の少ない建物や自然と共存した仲間との暮らしという個人的な生活の志向も大切ですが、そこを訪ねる人びとが学ぶことができ、他の地域へ広がっていくこと、持続可能なコミュニティのモデルとなっていったらいいなと本気で考えています。

さっそく、建築やエネルギー、農村計画などのプロを交えて検討を始め、年内中に素案完成を目指しています。プロセスにはより多くの方の意見やアイデアを盛り込んでいきたいのでで、エコビレッジに住みたいという人はもちろん、自給自足や持続可能な地域づくりに興味のある方はぜひ参加してください。

法人化と同時に会員も広く募集しています。
エコビレッジの実現にご支援、ご協力よろしくお願いします!

正会員 年会費一口5万円
・法人の運営および建設計画にかかわることができます。
・主体的に施設を利用したり、自分のやりたいことを運営会議で提案することができます。
・体験塾の一部プログラムを受講できます。

サポート会員 年会費一口1万円
・会の趣旨に賛同して活動を応援してくれる方。
・法人の議決権はなく、ニュースレター等で活動の状況をお伝えします。
・田植え、稲刈り、収穫祭などのイベントにご招待します。

お問い合わせ、お申し込みは札幌事務所まで。

札幌市中央区宮ヶ丘2丁目1-1-303
NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト
理事長 坂本純科
011-640-8411
junkasakamoto@gmail.com

2011年12月9日金曜日

体験塾2011年最終回

12月4日は、今年の体験塾の最終日でした。全20回(特別プログラムを入れると25回くらいでしょうか)という長いプログラムでしたが、みなさん最後まで参加して下さり、ありがとうございました。

最終日、前半行ったのは「味噌の仕込み」。畑で採れた青大豆3.5kgと昨年の体験塾で収穫した米を使った麹4.5kgを使った手前味噌です。まずは、前日から煮ていた大豆と3分づきの米麹を味見。どちらもとっても甘く、その美味しさに「この材料で作る味噌が美味しくないはずがない!」と意欲も高まります。大勢で行ったため思いの外早く、約1時間で作業は終了し、あとは麹や乳酸菌などの微生物が美味しい味噌に仕上げてくれるのを待つばかりです。今回仕込んだ味噌、出来上がりは来年の秋の予定。来年の収穫祭にはみんなで味わうことができるのではないかと今から楽しみです。

午後からは、「稲わら細工」。正月用のしめ縄をつくりました。前回の納豆づくり同様、お米の生産の際に生まれる副産物の活用です。木の棒で打って柔らかくしたわらを水で湿らせ、束をつくって編んでいきます。円座になって雑談しながらこういった作業をする時間は、本当はとても貴重なものなのでしょうね。昔の農家さんなら、いろりを囲んで行ったのでしょうか。

それぞれ、新しい年を迎えるにふさわしい立派なしめ縄を完成させたところで、今年の体験塾は終了。最後にこれまでの学びの振り返りをしました。みな、初めての体験が多く、聞いて驚いたこと、やって感動したこといろいろだったようです。今年は、作物栽培や保存食加工はじめ、体験塾で行ったことを自分の生活の中でも実践している方が多く、嬉しい限りです。今後も、参加した皆さんと連携して、豊かな生活をつくっていければ、と思っています。
冬場は凍りつきそうなコモンハウスですが、1月には番外編で豆腐を作ったり、酒蔵を見学したりと楽しい企画を用意して待っています。
来年また元気でお会いしましょう!

2011年11月23日水曜日

農とともに歩む社会(講演エップレイモンド)



11月23日の体験塾の座学テーマは『持続可能な農と社会』。講師として、メノビレッジ長沼よりエップ・レイモンドさんと荒谷明子さんをお招きしました。
 アメリカ人であるレイモンドさんが自国の大規模農業の在り方に疑問を持ち、カナダでのCSA農業(地域で支える農業)を経て長沼で現在のメノビレッジを作り上げる経緯から、国を超えた食糧生産や経済の問題を感じさせられました。メノビレッジでは「安心・安全な野菜を作ることを目的としてはいない」とレイモンドさんは言います。大切なのは土づくりであって、その結果として安心な野菜が生産できるのだという考え方です。「栄養の循環」「お金の循環」をあくまで思いやりの届く規模にすること、つまり持続可能な地域社会づくりを活動の目的としているとのことでした。今後の活動の広がりとして、設立に向けて動き出しているNPO法人についてもお話ししていただきました。

実習では、「納豆づくり」と「もみ殻燻炭づくり」を行いました。どちらも稲の副産物を利用した活動です。
納豆は、稲わらについている野生の納豆菌を利用して作ります。手順としては、稲わらを束ねた「わらづと」をつくり、沸騰させた湯で10分ほど煮て殺菌した後、蒸し大豆を入れて保温。発泡スチロールの箱に湯たんぽを入れて、約40℃を30時間ほど保ち、納豆菌を培養するのです。ちなみに、使った稲わらと大豆は、自分たちで育てたものです。1日で行う実習では完成まで至らないため、今回は前日に仕込んでおいたものを最後に取り出して味見をしました。稲わらの香りが少し残っていますが、なかなか美味しい納豆が出来ていました。自分で仕込んだわらづと納豆はお持ち帰りいただき、自宅で保温を継続してもらいました。

今年獲れたお米のもみ殻を使って、燻炭づくりも行いました。 燻炭は、畑の土壌改良や段ボールコンポストの資材になるほか、鶏のエサに混ぜるなど様々な用途がある優れものです。せっかくもみ殻がたくさんあるのですから、自分で作らない手はありません。畑の中で小さな焚火をし、燻炭器をかぶせてからもみ殻で覆います。中から炭化が進むので、最初は撹拌しながら様子を見、全体に炭化が進んだところでしばし放置します。1時間後、見事に燻炭が出来上がりました。

昔から続いてきた「農」は、決して作物を生産することだけではありませんでした。栽培によって生まれる副産物も次の活動に利用しながら、すべてを連続させ、循環させていたのです。それはもちろん、「自給」が中心だったからこそできたことでしょう。 専門家・分業化が進んだ社会がつくり出してしまった「無駄」「廃棄物」という概念を再び生活の循環に戻していくための知恵をこれからも学びたいものです。

2011年11月5日土曜日

秋の味覚を味わう

11月5日のプログラム、テーマは「秋の味覚」でした。
まず、午前中は鮭トバづくりから始まりました。ジャガイモなどの畑の幸との交換でいただいた“秋味”をみんなで3枚におろし、まずは塩漬けにします。 鮭トバづくりの下ごしらえとしては、15%程度の塩水に一晩漬け込むのが一般的なようですが、今回は直接塩をすり込んだ状態で4時間ほど保管する方法で行いました。

その後は畑に出て、ニンジンやダイコン、ゴボウ、ネギなど「秋の収穫作業」です。 土が固いためかダイコンはなかなか大きいのができないのですが、どれも瑞々しくて美味しいものが獲れます。6月に播いたニンジンやネギも、香りの強い立派なものがたくさん獲れました。が、何と言っても今回の収穫のメインは「ゴボウ掘り」。北海道弁で、子どもが駄々をこねることを「ゴンボ(ゴボウ)掘る」と言いますが、ゴボウ掘りはまさに手に負えないほど大変な作業です。特にこの畑はかなり粘性の高い土なので掘るのは本当に大変なのですが・・・この手の作業は、何故か気持ちが乗り始めるとどんどん体が動きます。「もっと上手に掘ってキレイなゴボウを収穫しよう!」という気分になってくるのです。掘り上げたゴボウは、土の性質には合っているのかエグみが少なく生で食べても十分美味しいものでした。

昼食のメインは、先ほどの鮭の「アラ」を使った「アラ汁」です。
ダイコン、ニンジン、ゴボウ、ネギ、ジャガイモといった具もすべて畑の産物、味噌も昨年仕込んだ手前味噌で、かなりの「高自給率」な昼食となりました。
もっとも、「自分たちで育てて収穫した野菜たちを食べる喜び」は、自給率云々と言った数字の話よりもずっと貴重な気もします。畑から掘って雨水で洗っただけの野菜をかじった時の、刺激的な香り、味覚が伝えてくる「生命力」。それらを感じることは、何にも替え難い「収穫」なのかもしれません。

午後のプログラムの前半は座学。『人間と農』と題して、人類の食料調達の歴史をあらためて学びました。 長い狩猟採集時代を経て「農」を獲得する経緯やそれによって得たもの、失ったものを知ることは、これからの人間の在り方を考えるときの手がかりになるはずです。 近代の「化学化」「機械化」が進んだいわゆる大量生産型の慣行農業に多くの問題があることは事実ですが、単純に化学肥料・農薬が悪いなどとは言えないことも、農耕が生まれて発展した歴史を思い起こすと見えてくるのです。客観的な視点で歴史をとらえた上で、「ではこれから自分たちがどうしていけばいいのか?」を考えることが重要なのでしょう。

午後の後半は「切り干し大根づくり」でした。
先ほど収穫した大根を千切りや輪切りにし、干し網の上に並べます。非常にシンプルですが、大根がたくさん獲れて冷たい風が吹きつけるこの時期ならではの作業です。 包丁づかいが達者な方が揃っているので、あっという間に大量の仕込みが出来ました。 午前中に塩をすり込んでおいた鮭も、軽く水洗いして一緒に干して、すべての仕込みが終了。 後は乾燥を待つばかりです(毎日、撹拌するなどの作業はしていきます)。

案外簡単にできる保存食づくり、「家でもやってみます」という感想が多かったことを嬉しく思いました。 体験塾のプログラムは、単なる知識ではありません。あくまで日常に結びつけていくためのものだと考えています。 札幌などのアパートやマンションのベランダで、みんなが干し野菜を作っているなんて、素敵な風景だと思いませんか。

2011年10月30日日曜日

2011年収穫祭盛況に終わる






久々に青空が顔を出した10月最後の日曜日。収穫祭が行われました。丹精こめた貴重な実りをお世話になった方々と分かち合い、多くの人に活動をお披露目する晴れの舞台です。
お料理は担当メンバーが何週間も前からメニューを考え、下準備をし、前日はほとんど寝ずに作りました。メインディッシュはお楽しみの塩むすび。天日干しでじっくり乾燥、先週籾摺りをしたばかりの新米です。これを初めて炊くときは毎回緊張します。図らずも水加減を担当することになり、責任重大。だって5升の米なんて普段炊かないし、失敗したら大変なことに・・・。ガス釜と羽釜の二つを使い、見事ふっくらと炊きあがったご飯を見て思わず「やった~」と声をあげてしまいました。ひいき目と言われるのは承知ですが、白米だけで本当に味があるのです。これは感動しないではいられません。

おにぎりに続いて自家製野菜の汁物や煮物、サラダにデザート、ずらりと並んだ色とりどりの料理にみなで舌鼓を打ちました。 70人近くで食卓を囲む姿はまるで地球家族ですね。初めて会う方々も思わず一気に親しくなります。エコビレッジができたらこんな食卓になるのでしょうか。


屋外では足踏み脱穀や縄結い、石釜ピザづくりなど、初めての体験を楽しむ人びとで賑わいました。ピザも閉店頃には温度がちょうどよくなり、本場イタリアピザのような焼き上がり?だったとか。 お腹がいっぱいになった後は、アフリカや南米などバリエーションに富んだ音楽で盛り上がりました。今年一番のサプライズは近所の農家のおじさん(笑)がアフロヘアで登場。飛び入りのアメリカ人のベースを相手になかなか意味深い歌を披露してくれました。

2Fは雑貨やお菓子の販売、フリーマーケット。東日本被災地支援のみさんがワークショップなど、楽しい出店が所せましと並びます。エコビレッジをサポートしてくれているアーティスティックでハートフルな仲間たちです。



祭りの最後は1年間の取組みをフォトムービーで振り返りながら幕を閉じました。みんな、自分たちの努力の積み重ねと成長を感じながら誇らしい気持ちで見入っていました。本当に、外から見たら遅々たる歩みでしょうが、前にはできなかったことが少しずつだけどできるようになっている、一人でやっていたことがみんなで力を合わせてできるようになった、まるで幼子の成長のようにこの3年の成果を私自身強く感じました。そして、そんな私たちの歩みを支えてくれている素敵な仲間たちに深く感謝しました。
持続可能な社会は誰もが願うことですが、その道のりは不透明です。エコビレッジのテーマである自給自足やコミュニティも、ともすると閉じた環境を創りかねません。魅力的な場と機会を通じてさまざまな人を巻き込みながら、わくわくするような次世代の暮らしを創造していきたいと思います。

2011年10月23日日曜日

美味しいお米までもう一歩

10月23日の体験塾は、前半では総合コース中心に収穫祭に向けた打ち合わせや作業、後半は総合・田墓コース合同での座学や稲の脱穀を行いました。

4月に始まった今年の体験塾も終盤に差しかかり、メンバー同士のつながりも深くなってきました。今回のようにグループで相談しながら行う活動も、お互いに声を掛け合いながら主体的にかかわって下さり、こちらも助かっています。
また、初めはあくまで「教育サービスの受け手」として参加した方々が、この収穫祭に向けた取り組みでは「迎える側」として力を発揮して下さったことも嬉しく感じました。

さて、今回の座学のテーマは『農薬』です。体験塾に参加されている方は、一般の人よりも有機農業や自然農に対する関心が強いかと思いますが、農薬や化学肥料の知識は案外乏しいかもしれません。いたずらに嫌ったり恐れたりするのでなく、正しい知識をもとに考えていく姿勢が必要との意図で、体験塾ではこのテーマを取り上げています。
世界的な農薬問題のきっかけを作った『沈黙の春』の著者レイチェル・カーソンにスポットを当てながら、この問題の本質がどこにあるのかをみんなで考えました。

最後は稲の脱穀。6月の田植えに始まり、除草や虫取り、藻の除去など苦労の多かった田んぼの作業もいよいよ最後です。はさがけして干してあった稲が良い具合に乾燥したので、体験塾前日にメノビレッジの機械で脱穀及び籾摺りをしてもらっていたのですが、そういった作業も手で体験しておきたいと考え、1割ほどを体験用に残しておいたのです。
最初は足踏み脱穀機で、稲の穂からモミを取り外しました。続いて、同じ脱穀作業を電動脱穀機を使って行いました。私たちは、こういった比較が重要だと感じています。もちろん電動は楽なのですが、電気がないと使えないし、量によっては足踏みの方が勝手が良かったりもします。また、わたし達が借りている田んぼ1枚、1反分をすべて手作業でやろうとすれば、それはかなりの時間と労力を要することになります。「できない」のでは意味がありません。電機や石油が「安いから」「高いから」もしくは「作業が大変だから」という理由で安易に機械化を計るのでなく、また近代の技術をすべて否定するのでもなく、あくまで人間の力を主体にしながら「適正な規模」での「適正な技術」を獲得していきたいものです。これまでの常識にとらわれずに、自分たちの考え方にあった技術を考え、探していくことが大切なのでしょうね。

2011年10月21日金曜日

実りの秋に考えること

友人のご両親が営む余市の果樹園を訪ねました。今はぶどうの収穫が山場です。今年はたまたま身体を壊して収穫の作業ができないと伺い、みなで駆けつけました。 たわわになるぶどうは美しく、その風景を見ているだけで何だか豊かな気持ちになります。野菜や穀類の畑とは違った果樹園ならではのロマンティックな景観にちょっと感激しました。


今日の作業はワイナリー用の赤ぶどうの収穫です。幸い、寒くもなく暑くもなく、ちょうどよい気温。椅子に腰かけてのんびり作業しながら鼻歌も混じり・・・これはいいや、と思ったのは最初の1時間ほど。カビや腐りの入った部分を鋏で取り除く作業が結構手間で、思ったよりもはかどりません。そのうち「え~、これ、全然終わらないじゃん」「この広さを老夫婦二人で維持しているなんて」とため息が。聞けば、今週中に出荷しないと農協に引き取ってもらえないとか。時間が経つほど傷みも進むので、いずれにしても後1週間の勝負だろうということでした。


農業はいかに自然に合わせて働くかが肝です。仮に出荷や収益を度外視しても、作業に適期はつきもの。どんなに丹精込めて作っても、どんなにたくさん実っても、ベストなタイミングで収穫しなければ、それまでの努力や成果も水の泡にしてしまいます。だから、雨が降ろうが風が吹こうが必要な作業を休むわけにはいきません。
「こんなに立派に実っているのに取り残すなんてもったいない・・・」「農業をやりたい人はたくさんいるから声をかければ」みなさん、そうおっしゃいます。でも、天気や作物の状況を睨みながらたった数日から1~2週間の収穫期に十分な人を集める、またその人たちに適切に作業をしてもらう環境を整えるのも容易なことではありません。それに青空の下でリフレッシュ♪なんて日には「農業って健康的でいいわね」ということになるでしょうが、風雨に打たれて長時間その作業をする人が一体どのくらいいるでしょう。私はワインを飲まないので製造事情にも詳しくはありませんが、欧米の美味しいワインも、ひょっとしたら劣悪な環境で働く労働者に支えられているのでは・・・と思わず疑念を抱いてしまいました。まして有機無農薬栽培は、ますます手間がかかります。健康志向の消費者は少々高値でもお金を出すかもしれませんが、それでも重労働を変えることはできません。かつて英国に住んでいたころ有名な大規模オーガニック農園を訪ね、300人の季節労働者の半数以上がポーランドからの移民だと知って驚きました。一方、テレビのインタビューでは「最低時給で農業をするくらいなら生活保護をもらうよ」とイギリスの高校生。はたして日本の若者はどうでしょうか。


私たちのやっている農体験はあくまでも自分たちが食べることが目的で、現金を得るためではありません。農作業を通じて実にいろいろなことを学び、自分を鍛えることができると考えています。そして、作物栽培がなかなかお金にはならない重労働に支えられているという事実を知ることで、食べ物を安く買いたたこうなんて思わなくなるなら、それだけでも重要な体験だと思っています。プロから見たら遊びだと笑われるかもしれませんが、種を撒き大切に作物を育てて実ったときの嬉しさや自然の中で働くことの喜びは、たとえ経済的には無意味でも何事にも代えがたいものです。相変わらず巷では、口先三寸で何も生産しない仕事が大金を稼ぐ仕組みになっていますが、果たしてそんな社会に未来があるでしょうか。自然に感謝しながら汗を流し、小さな種から実りを生む労働の価値を分かち合うことのできる人びとこそが、よい社会を創ると信じます。