2011年8月30日火曜日

実りの秋

8月21日は、しばらくぶりの再会からスタートしました。

体験塾はせいぜい月に2~3回の開催、コースによっては数週間空いてしまうこともあります。でも、畑に関して言えば、それでは継続的に変化を追えません。作業に対する主体性を持つことも難しくなってしまいます。プログラムのない日も自主的な作業をお願いしていますが、総合・田畑両コースの皆さんがそろったのは実に1か月ぶりでした。

1カ月経てば畑の様子もずいぶん変わります。特に今年は7月末から8月前半がかなり高温になりましたから、作物の丈も伸び、緑が一気に茂りました。
そこでまずは、みんなでそんな作物の様子を一つずつ観察。もちろん手には籠とハサミを持って、収穫も同時に行いました。同時に、果菜類の脇芽取りや枝の誘引、ニンジンの間引きなどの作業も行いました。

次の作業は「イモ掘り」です。前日までの雨で、できるかどうか不安があったのですが、かなり高畝にしていたこともあって土の状態はまずまず。秋の収穫体験のメインともなるイモ掘りに精を出しました。
昨年は今イチだったジャガイモですが、今年は随分良い出来でした。1株に2LサイズからSSまで、おおむね5~7個のイモが出てきて、皆さんの顔もほころびました。農家さんが育てるジャガイモでは当たり前の収量ですが、ほぼ無肥料の畑でこれだけのものが獲れるということに驚かされます。
不作だった昨年と比べて何が違うのか、気候等の問題ももちろんありますが、やはり高畝が功を奏したように思います。とはいえ、かなり手間のかかる作業ですから、その労力と収量の関係は考える必要があるでしょう。あまり大変すぎるのでは、自給も難しいですから。

その後は、秋作のダイコンの播種。これは土の状態が良くなく、予定通りの作業とはなりませんでした。ダイコン畑はある程度深く起こしたかったのですが、土の水分量が多すぎて播く環境を整えられなかったのです。
仕方なく、ここは一旦ポットに播種。苗立てすることにしました。1ポットに3粒播き、タネは早生種の50日ものと「総太り80日」というすごい名前のもの。播種作業はこれまでにも度々やっているので、みんな説明なしでもできるようになっています。何度も経験することは大事ですね。あとは・・・自分の蒔いた種の発芽の様子をしっかり観察して、苗の生育を助け、見守る、ということになるのですが、こちらについてはもう少し課題が残るかと思います。そこはもう、各自が意識を持って始めたときからそれぞれが試行錯誤していく部分なのだろうと思っています。
また、本当は苗にせずに何でも直播したいのですけれど、畑の性質上(粘土、風など)生育初期段階は苗にして保護してあげる方が良かったりもします。今の時期はまだまだ虫も多いので、もしかすると「結果的に良かった」ということになるかもしれません。 それもまた、経験だと思います。

作業の後は、採りたて野菜で作ったサラダや炒め物などがずらり。bio(札幌市中央区)のケータリングカレーも美味だったけれど、自家製野菜のおかげでランチがぐっと豪華になりました。

2011年8月28日日曜日

夏の最後を飾るガーデンパーティー



ガーデンのハーブが山盛りになってきたので、株分けをしました。特に、レモンバームは刈っても刈っても繁茂します。よほどここの土質にあっているのだろうと思い、分けた株を畔の法面に移植しました。エントランスのレモンバームが香りもよく、防草効果を発揮してくれるといいなと期待しています。葉っぱのほうは、乾燥してお茶にしたり、精油に挑戦したりしました。圧力鍋での精油は失敗しましたが、アロマウォーターはなかなかいけるという報告が寄せられています。







エキネシアも、昨年入れた9センチポットが見事に成長したくさんの花を咲かせています。身体の免疫効果を高めると言われており、花に熱湯を注いでフレッシュなお茶を楽しんでいましたが、葉っぱも茎も薬効があるそうです。ネイティブインデイアンは「マスクいらず」と呼んで薬の代わりに使ったとか。欧米ではお茶やキャンディーなどが市販されています。

今年のガーデンは、きゅうりやナスなどの果菜類が今ひとつでしたが、全体的には美しく健康に育っています。レイズドベッドのごぼう(左写真)も元気。ズッキーニは一時期うどんこ病でもうダメかなあと心配しましたが、丁寧に病気の葉っぱを取り除いているうちに、また復活しています。親バカに聞こえるかもしれないけれど、トマトはどこで食べるものより味が濃くて美味しい気がしています。


今日はダッチオーブンでピザを作りました。ピザの具はすべて自家製野菜。加工用のサンマルツァーノで作ったトマトソースは絶品。持ち寄りの煮物やデザートが並び、豪華なガーデンパーティーとなりました。太陽の下で、自ら育てた野菜料理を仲間とともにいただくのはまさに至福の喜びです。

この日は、会員さんの友達や家族をはじめ、近所の方も来られ、ランチは昼から夕方近くまで続きました。飛び入りゲストのアメリカ人ブレットは、ポートランドのエコビレッジに住んでいたという青年。アメリカでは60年代のヒッピー運動の中でエコビレッジが生まれましたが、最近は環境負荷の低減などより目的化したコミュニティが増えているそうです。人間関係の難しさはお国が変わっても同じとみえ、コミュニケーションやグループワークに関するエクササイズを積み重ねていると話してくれました。

2011年8月21日日曜日

パーマカルチャーって何?



今月の座学のテーマはパーマカルチャー。講師はパーマカルチャーセンター・ジャパン理事であり、建築家の山田貴宏さんです。

パーマネント(持続可能な)+アグリカルチャー/カルチャー(耕作・文化)という英語の造語で、オーストラリアの生態学者が提唱した理論。自然界では無駄なもの、廃棄されるものは何もなく、お互いにつながり、すべてのものが有用であるという原理原則に基づいています。もちろん、そんな外来の概念に頼らなくても、日本には里山や農村の伝統文化の中に、そのような暮らしの知恵やデザインはたくさんあります。江戸時代の日本が完璧な循環社会だったことはよく知られています。人間の排泄物を含め、すべての物質をリサイクルし、上手に資源として活かしていました。当時の日本を訪れた欧米人はそのことに痛く感動したと言います。近代都市化の過程で、大量生産、大量消費の経済が台頭し、「安い、速い、うまい」を追求した結果、さまざまな資源が分断され、大量の無駄を生みだす社会になってしまいました。当然、その時代とは人口など社会環境が大きく異なりますから、それをいきなり復元するのは難しいけれど、都市なり農村なり、それぞれの環境における土地利用や生活の中でできるだけ再生していくことはこれからの課題でしょう。

パーマカルチャーは自然環境に配慮することはもちろん、人間への配慮、そして余剰物を共有するという考えをベースにもっています。生態系の保全という視点にとどまらず、また単純に昔のシステムへの回帰ということでもなく、現代の科学知識も活かし、経済的な持続可能性や社会的正義を含めたデザイン体系としてあらわされている点に着目したいと思います。パーマカルチャーを「スパイラルガーデン」や「チキントラクター」など個々の装置やデザインとしてとらえている人が少なくありませんが、それはあまりにも狭小な理解です。それぞれの地域や土地によって資源も異なり、つながりもさまざまです。ただ装置を並べただけの仕組みは、むしろパーマカルチャー的ではないと言えるのではないでしょうか。

山田さんは、ご自身の専門である建築でもこのパーマカルチャーの理論を応用されています。最近は神奈川県藤野の里山長屋暮らしプロジェクトをプロデュースし、自らも住民としてかかわって、メディアの話題を呼びました。4所帯の家族が長屋スタイルで住み、コモンハウスを持つことで資源や施設、スペースを共有するコレクティブな暮らし方が特徴です。設計段階から住民が100回に及ぶ話し合いを重ね、土壁や竹小舞の制作など建設にも住み手が参加して作った手作りの住まいです。思わず「あんな家に住みたいな~」という声も。

この日は、レクチャーの後に、パーマカルチャー理論の理解を深めるために、簡単なワークショップに挑戦しました。現在のコモンハウスおよび周辺環境の中から資源をリスト化し、アイテムデザイン(こんなものを作りたいという住民の希望)とのマッチングをするというワークです。短時間だったのに、面白い案がたくさん出てきました。風や雪、スギナなど一見ハンディと思われる要素も、積極的に活用することで解決しながら利点にもなりそうです。本番エコビレッジの建設計画でもぜひトライしてみたいと思います。

2011年8月14日日曜日

ベランダガーデン

久々に札幌の我が家のベランダガーデンの様子です。






実は、プランターの作物が大きくなるにつれて、日照量不足でパプリカ、なんばん、レタス、シソはひょろひょろに、きぬさやは枯れてしまいました。欲張ってたくさん植えたのが悪かったのです。通風不足か、ズッキーニは灰色かび病になってしまいました。その中でもばりばり元気なのはトマト。北の雫特徴の美しい流線型の房が見事です。


他の作物もプランターを減らして日当たりをよくしてからは少しずつ逞しくなり、パプリカはようやく色づき始めました。病気になったズッキーニも長沼でしばらく陽に当てた後、ガーデンに移植したら復活しました。レタスやルッコラも再挑戦しています。やっぱりお日様が大切。日照の限られるベランダでは、窮屈な植栽は禁物ですね。

2011年8月7日日曜日

下川で森の合宿





8月の宿泊研修は下川町まで足を伸ばしました。



下川町は、地元の資源である森を活かした森林体験プログラムと、環境負荷を減らすまちづくりの取組みがさかんで、道内でも先進的な環境モデル都市として知られています。昨年は「炭焼き体験」のプログラムに下川町森林組合から講師を招いて長沼で実習を行いました。炭は畑の栽培その他で自給ライフには貴重な資材なので、単体でやっても有益なプログラムですが、今年は、炭になる前の森林資源がどう育てられ、どんなふうに活用されているのかを幅広く学習しようと下川までやってきました。

さて、この週末はこの夏一番の猛暑でしたが、体験の森に入ると、中は気温が一気に5度くらい下がったようにひんやりしています。NPO法人「森の生活」の森林体験ガイド麻生さんにリードされ、まずはトドマツの枝を間伐する作業から。枝の落とし方を教わり、葉っぱの匂いをかいでみると清々しい芳香にみな感激。これを蒸留して精油をとるのです。カラマツやエゾマツでは精油の生成量が8分の1ほどとか。しかもトドマツのほうが香もずっとさわやかな感じがします。森のアロマを思い切り吸い込んでしばしリラックス。とったトドマツは、森の生活が管理をしている宿泊研修施設ヨックルに持ち帰り、卓上の蒸留装置に葉っぱを詰め、精油を抽出しました。熱を加えて蒸気の中に放出された香のエッセンスをパイプに溜め、水蒸気を液化させます。精油は水より軽いので上に浮き、下に蒸留水がたまります。その蒸留水を慎重に抜いて、残った精油を大事に大事にビンに入れました。製品になったものと比べるとまろやかな香りです。蒸留水は化粧水として使ってもいいと聞き、さっそく使ってみました。



蒸留を待つ間はお約束の炭焼きです。昨年に続いて下川町森林組合の渡辺さんに指導していただきました。ちゃんとした窯がなくても、ドラム缶を設置する手間をかけなくても、ただ地面に穴を掘って木材を並べ、トタン板で蓋をするだけで炭が焼ける、伏せ焼きという方法です。まずは材料の丸太を手鋸で切る、この作業が大変。汗だくになったところで「では文明の利器に頼ってみましょうか」とチェーンソーの登場。切った丸太を穴の中に敷き並べ、煙突とトタンを設置したら土をかぶせて火をつけます。後はせっせと扇いで温度をあげること4時間あまり。寒い季節なら芋でも焼いて火を楽しむところですが、今日はこの炎天下。温度も上がっているのかどうかわかりません。本当は煙が透明になってくるまで高温にしなくてはいけませんが、タイムアウトで蓋をしました。翌朝、どきどきしながら開けてみると・・・。うーん、3分の1というところでしょうか。入口近くは炭化し、奥はまだ火が回っていないという状態でした。やはり密封する前の温度が低かったようです。でも、この方法なら準備が簡単な分、もともと歩留りが低いと想定してかかればそれなりに効果的です。長沼に帰ってからいろいろ工夫してやってみようと思います。

2日目は森の生活代表の那須さんに、下川町の森林資源を使った加工所やエネルギー施設などを案内していただきました。下川は昔から林業はさかんでしたが最近まで下川産の材料を地元で使っていなかったとか。価格だけで競争すればやはり外国の大量生産にかなわないのでしょう。それが1951年に台風で倒れたカラマツの利用方法としての炭づくりをきっかけに、今ではさまざまな森林資材の加工、活用によって、地材地消を進めています。針葉樹の丸太や集成材、白樺の間伐材(といっても太い!)で作る割り箸、トドマツの葉っぱは精油をとるだけでなく乾燥させて舗装材にしたり、抜根した廃棄物も燃料にしたりして、最後の最後まで使い尽くしています。


ここで考えさせれるのが、木を植えながら森を育て、材として使っていくという、循環型の森づくりが非常に息の長い事業であり、経営的な自立が難しいという点です。いくら植林をしても、育てるコストを生み出すためには、資材を活用して収益をあげなければなりません。巷には植林だけ喜んでやる人がたくさんいますが、それを育てる苦労や費用を負担する気はないように見えます。

たとえば、割り箸を例に考えてみましょう。割り箸は環境保全主義者から目の敵にされがちです。確かに「使い捨て」という非難はありますが、それほど単純な話ではないように思います。建材になるような樹木を切って作った割り箸を海外から輸入してくるケースは別ですが、国内の森林を育てるプロセスで発生する材を有効活用するには、むしろ割り箸も日本の古い文化としてサポートするべきではないでしょうか。


環境モデル都市、下川。チップボイラーを公共施設や町営住宅に使ったり、地熱やペレットボイラーを備えた環境共生型住宅でエコ体験イベントが開催されたり・・・。行政、NPO、森林組合がリンクしながらいろいろな活動をお互いに支えあっており、まちづくり全体に広がっていました。暑かったけれど、実り多い合宿でした。