2011年8月21日日曜日

パーマカルチャーって何?



今月の座学のテーマはパーマカルチャー。講師はパーマカルチャーセンター・ジャパン理事であり、建築家の山田貴宏さんです。

パーマネント(持続可能な)+アグリカルチャー/カルチャー(耕作・文化)という英語の造語で、オーストラリアの生態学者が提唱した理論。自然界では無駄なもの、廃棄されるものは何もなく、お互いにつながり、すべてのものが有用であるという原理原則に基づいています。もちろん、そんな外来の概念に頼らなくても、日本には里山や農村の伝統文化の中に、そのような暮らしの知恵やデザインはたくさんあります。江戸時代の日本が完璧な循環社会だったことはよく知られています。人間の排泄物を含め、すべての物質をリサイクルし、上手に資源として活かしていました。当時の日本を訪れた欧米人はそのことに痛く感動したと言います。近代都市化の過程で、大量生産、大量消費の経済が台頭し、「安い、速い、うまい」を追求した結果、さまざまな資源が分断され、大量の無駄を生みだす社会になってしまいました。当然、その時代とは人口など社会環境が大きく異なりますから、それをいきなり復元するのは難しいけれど、都市なり農村なり、それぞれの環境における土地利用や生活の中でできるだけ再生していくことはこれからの課題でしょう。

パーマカルチャーは自然環境に配慮することはもちろん、人間への配慮、そして余剰物を共有するという考えをベースにもっています。生態系の保全という視点にとどまらず、また単純に昔のシステムへの回帰ということでもなく、現代の科学知識も活かし、経済的な持続可能性や社会的正義を含めたデザイン体系としてあらわされている点に着目したいと思います。パーマカルチャーを「スパイラルガーデン」や「チキントラクター」など個々の装置やデザインとしてとらえている人が少なくありませんが、それはあまりにも狭小な理解です。それぞれの地域や土地によって資源も異なり、つながりもさまざまです。ただ装置を並べただけの仕組みは、むしろパーマカルチャー的ではないと言えるのではないでしょうか。

山田さんは、ご自身の専門である建築でもこのパーマカルチャーの理論を応用されています。最近は神奈川県藤野の里山長屋暮らしプロジェクトをプロデュースし、自らも住民としてかかわって、メディアの話題を呼びました。4所帯の家族が長屋スタイルで住み、コモンハウスを持つことで資源や施設、スペースを共有するコレクティブな暮らし方が特徴です。設計段階から住民が100回に及ぶ話し合いを重ね、土壁や竹小舞の制作など建設にも住み手が参加して作った手作りの住まいです。思わず「あんな家に住みたいな~」という声も。

この日は、レクチャーの後に、パーマカルチャー理論の理解を深めるために、簡単なワークショップに挑戦しました。現在のコモンハウスおよび周辺環境の中から資源をリスト化し、アイテムデザイン(こんなものを作りたいという住民の希望)とのマッチングをするというワークです。短時間だったのに、面白い案がたくさん出てきました。風や雪、スギナなど一見ハンディと思われる要素も、積極的に活用することで解決しながら利点にもなりそうです。本番エコビレッジの建設計画でもぜひトライしてみたいと思います。

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